『神様!わたしに友だちをください!』


・所要時間約8

・登場人物

そらみ()…高校まで奇人変人過ぎて友だちがいなかったため、大学デビューすべく奮闘する大学1年生。

りりこ()…彼氏以外の人間関係を極力避けるクールな大学1年生。

かなた()…りりこの彼氏。柔和で優しいが、好きなことには熱い大学1年生。



そらみのモノローグ。


そらみ「わたしはそらみ!明応大学の新入生!わたしには1つ願いがあります。嗚呼、神さま。わたしに友達をください!」


明応大学の入学式後。

りりこが電話をしている。

そこに、そらみが現れる。


りりこ「もしもし。わたしはもう会場出たよ。うん。いま?門のところ。」

そらみ「やあ。」

りりこ「…(シカト。)そうそう。1番目立つところに立ってるから。」

そらみ「そこの麗しきレディ!君だよ!」

りりこ「…(シカト。)え、なんか聞こえる?大丈夫。なんでもない。」

そらみ「なんでもなくないぜ。嬢ちゃん。君だよ!君!」

りりこ「…(小声で)あ、うん。今なんか変なのに絡まれてるから、また後で。」


りりこ電話を切る。

そのまま、立ち去ろうとする。


そらみ「待ちな!」

りりこ「…(シカト。)

そらみ「待ちなってば〜」

りりこ「はい。なんですか?」

そらみ「お主に頼みがあるんです!!!」

りりこ「え、なんですか?」

そらみ「わたしと友だちになってください!!!!!!お願いします!!!」

りりこ「嫌です。」

そらみ「っかーーーーーー!即答!染みるぜ!」

りりこ「(戸惑って)えぇ……。」

そらみ「やっぱ、姉やんかっけぇなあ!これは捨て置けねぇ。」

りりこ「……はあ……。」

そらみ「アタイと友だちになる運命ってやつだ。」

りりこ「それはないと思いますけど。」

そらみ「だぁーーーーーー!これまた即答!たまらんち!」

りりこ「なんなんですか。あなた。」

そらみ「お!自己紹介させてくれるんすか!?あざす!」

りりこ「そうじゃなくて。」

そらみ「アタイは、明応大学1年のそらみ!」

りりこ「はじまっちゃった。」

そらみ「姉御と同じ新入生だよ!!!好きな食べ物はアジフライのしっぽ!!!よろしくね!!!」

りりこ「好物の癖つよ。」

そらみ「アタイの好物に興味がおありで?」

りりこ「ううん。ぜんぜn……。」

そらみ「香しい磯の香り!ザラザラとした歯触り!喉に突っかかる感触!トゲトゲして舌に刺さる痛み!ファンタスティック!トレビアーン!」

りりこ「磯の香りぐらいしかいいとこない。」

そらみ「ノンノン!姉ちゃん。もっといいとこあるぜ?歯に詰まるあの感じとか……。」

りりこ「(遮る。)もう結構です。それじゃ。」


りりこ立ち去ろうとする。

止めるそらみ。


そらみ「ちょ、ちょ、ちょ、ちょーい!ちょ待てよ!(イケボ)

りりこ「なんなんですか、あなた……。」

そらみ「アタイは、そらみ!好きなビニール袋は……。」

りりこ「(遮る。)もういいです。」

そらみ「で、汝は、アタイと友だちに……?」

りりこ「いや、なりませんよ。」

そらみ「なりますね。はい!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

りりこ「話聞いてます?」

そらみ「いやあ、照れますなあ。」

りりこ「なにが。」

そらみ「この刺激的な運命の出会いに乾杯。」

りりこ「いや、訳分かんない。」

そらみ「これから始まる俺らの物語。」

りりこ「始まりません。」

そらみ「Forever love.

りりこ「それはない。」

そらみ「またまた〜」

りりこ「絶対ない。」

そらみ「タマタマ!?」

りりこ「低俗すぎる。」

そらみ「……しゅん。」

りりこ「え?」

そらみ「アタイ、悲しくなってきちゃった。」

りりこ「突然、ブルーだな。」

そらみ「今までの人生、友だちって言える存在いなかったし、大学デビューしようと思って入学式に真っ赤な特攻服で来たら、周りから避けられるし。あーあ、アタイの人生ってなんなんだろう……。」


ブツブツ言うそらみから、そっと離れて立ち去ろうとするりりこ。


そらみ「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!!!何で立ち去ろうとする!」

りりこ「いや、今かなって思って。」

そらみ「おかしいでろぉ〜こんなにもか弱い乙女がシクシクしもうておるのに〜」

りりこ「か弱い乙女は、真っ赤な特攻服着ないよ……。」

そらみ「いいでしょ!これ!」

りりこ「いや、シンプルにやばい。」

そらみ「で〜〜〜なんでそんなこと言うんさ〜」

りりこ「わたしの服装が一般的だと思うけど。」

そらみ「一般的ってなんなんだろう。」

りりこ「いきなり哲学的。」

そらみ「動け!アタイのシナプス!!!」

りりこ「どうぞご勝手に。」

そらみ「つれねぇなあ!ちゃん姉!」

りりこ「ねぇ。」

そらみ「なんでろ?」

りりこ「さっきから、わたしを変な呼び方しないでもらえる?」

そらみ「では、なんと呼べば!」

りりこ「……普通に、君とかあなたとか……。」

そらみ「名を所望す!!!」

りりこ「絶対教えない。」


そこに、かなたがやってくる。


かなた「お、いたいた。りりこ〜!」

そらみ「り〜り〜こぉ〜!?」

りりこ「タイミング最悪。」

そらみ「ええ名前どすなぁ。」

かなた「いや〜すぐ見つけられたよ。」

りりこ「でしょうね。」

かなた「あれ、友だち?」

りりこ「そんなわけない。」

そらみ「(遮る)友だちです!!!」

りりこ「やめて。」

そらみ「こちらの殿方は?」

りりこ「聞かないで。」

かなた「あ、ぼくは、かなたです。」

りりこ「言わなくていい。」

かなた「え?そうなの?」

そらみ「ふたりは、恋仲っすか!じゅるり!」

りりこ「……まぁ、そうだけど。」

そらみ「ぐぁぁぁぁぁぁぁあ!!!アタイには眩しすぎるッ!!!」

りりこ「ほんと、なんなの……。」

そらみ「かなた殿にも、お願いがあります!!!」

りりこ「嫌な予感。」

かなた「え、な、なんでしょうか?」

そらみ「アタイと友だちになってください!!!よろしくお願いします!!!」

かなた「え、えぇ。」

りりこ「かなた。この人ほっといていいから。」

かなた「う、うん。」

りりこ「帰ろ。」


帰ろうとするふたり。


そらみ「だ〜〜〜!!!待ってくれ〜〜〜!!!」

りりこ「もう待ちません。」

そらみ「そんな殺生なぁ〜りりこ殿で、86人目なのにぃ〜」

りりこ「は!?そんなに声掛けてたわけ!?」

そらみ「左様で。」

りりこ「まってまってまって。それ、やめた方がいいよ。」

そらみ「いんや。アタイは、大学デビューして友だちをつくるって決めたんだ!」

りりこ「はぁ……どうぞご勝手に。」


ふたりは、立ち去ろうとする。


そらみ「えーん。またダメでもいた……。こんなときは、マイフェイバリットソング「ねりねりうめこんぶ」の「フレッシュバイスサワー」を聴いて心あたたかになろう……。」


立ち止まるかなた。


かなた「……今なんて……?」

そらみ「え?「ねりねりうめこんぶ」の「フレッシュバイスサワー」を聴こうと。」

かなた「マジかよ!?」

そらみ「およよ?」

かなた「ぼく「ねりねりうめこんぶ」めっちゃ好きなんだよ!」

そらみ「なんと!それは!」

かなた「アイドルの中だと、トップクラスだよなぁ。」

そらみ「わかるど。」

かなた「1番最高なのがさ〜」

かなた・そらみ「ぶーたんの口元のほくろ!」

かなた「だよね〜」

そらみ「んだんだ!」

りりこ「え、なにこれ。」

そらみ「りりこ殿〜仲間はずれにされて拗ね申したか〜?」

りりこ「は?拗ねてませんが。」

そらみ「またまた〜」

りりこ「はいはい。タマタマね。」

そらみ「先越されたぁ〜!」

かなた「なになに?さっき何かあったの?」

りりこ「めっちゃどうでもいいから、大丈夫。」


そらみがモジモジした後。


そらみ「……ふたりにお願いがあります!」

りりこ「今度はなに?」

そらみ「一緒にカラオケに行きたいです!!!」


間。


かなた「行こうよ!りりこ!」

りりこ「……いいよ。」

そらみ「りりこ殿……!」

かなた「うん!同じアイドル好きだし。盛り上がりそう!」

りりこ「そうと決まれば、ふたりとも行くよ。」


そらみのモノローグ。


そらみ「神様!わたしに友だちが出来ました!これで、もう1人ではありません!大学生活思いっきり楽しみます!ありがとうございました!」


~完~